Column
コラム
油による海洋汚染に対して美容室にできること。
海洋汚染は、生態系を崩し、環境や海洋生物への影響だけではなく、私たちの生活にも大きく関わってきます。海洋ごみ、廃棄物、工場排水や生活排水、油の流出がその主な原因とされ、流出した油の回収や処理に美容室に協力ができることがあります。
油の流出は、タンカー座礁事故、船舶の衝突や転覆、漁船などの給油や油の移送が原因で起きています。併せて、川沿いの工場からの漏洩などによっても発生しているそうです。
日本での人的な海洋汚染確認件数は、
・油による海洋汚染は286件(63%)
・廃棄物による海洋汚染が158件(35%)
と発表されています。(令和2年)
油による海洋汚染が、半分以上を占めるという事になります。
流出した油は海面を浮遊し、波や風の影響を受けて広域的に拡がります。
油膜の影響で光合成ができなくなったプランクトンが減少し、海洋生態系の食物ピラミッドに変化が起こり、多くの魚類に影響が出ます。
海辺に生息している海藻類、貝類、エビ、カニなどは逃げることができず、油の影響をダイレクトに受けます。アシカやアザラシなど海岸で過ごす海洋哺乳類は油で覆われる事によって低体温症で死に至る可能性があります。
海面に群れを成して浮かぶ海鳥は食糧源もしくは生息環境の喪失により死亡の危険にさらされます。また、羽毛が油で汚れることによって低体温症を起こして死ぬ可能性もあります。
そして、内湾や養殖場などでは、魚の大量死や石油の臭いが着臭して、漁業関係に大打撃となります。漁獲量が減少することで魚介類は高騰し経済にも大きな影響を与える事になります。
また、油には人に対する毒性も認められており、直接的にも間接的にも多くの人々への健康被害が懸念されます。
その油の拡散や流出を防ぐ為の大量の分散剤や合成素材で作られたオイルフェンスもまた生態系に影響を及ぼし、さらに多くの海洋生物が死んでしまう事にも繋がっているそうです。
その解決策のひとつとして、オイルフェンスの素材に油の吸着性に優れた人間の髪の毛が利用できるのではないかという事が米国の美容師によって発案されました。
そこで、NASAマーシャル宇宙飛行センターでの実験の結果、11,000キロの髪の毛をナイロンの袋に入れた場合、64万リットルの原油を吸収できると推定され、3.7リットルの原油が2分未満で吸収される事が分かりました。髪の毛は環境に悪影響を与えないエコ素材であり、サスティナブルな解決策だと言えます。
そして、1999年、この美容師によって環境活動団体マター・オブ・トラストが創業され、美容室で毎日カットして捨てられている髪の毛や牧場主、ペットトリマーが動物たちから刈り取った毛を回収してヘアマットを作り、海の波間を清掃する「クリーンウェーブプロジェクト」がスタートしました。
今では、これに賛同するグローバルハブパートナーが世界中に発足し、石油流出事故があった場合には、ヘアマットの提供に協力しています。
日本でも、2021年にクリーンウェーブプロジェクトが開始され、美容室や個人から寄付された髪の毛で作ったヘアマットを排水溝に設置し、水質汚染につながる油や炭化水素などを川に流れる前に吸着しようという試みを実施しています。
⚫︎マターオブトラストジャパン(米国環境活動団体Matter of Trust の日本パートナー)
[寄付が可能な髪の条件]
・2.5cm以上の毛髪のみ(人間の髪の毛のみ)
・2.5cm~10㎝と10㎝以上の髪の毛は分別して袋にまとめる
・カラーやブリーチ、傷んでいてもOK
・ジェルやスタイリング剤のついた髪はNG
・十分に乾いている髪であること
・毛髪だけを送付する(ピンやヘアゴムは入れない)
[寄付先]
〒158-0095 東京都世田谷区瀬田2-12-15
マターオブトラストジャパン
濱 七彩子さま
※その他、マットをつくるためのボランティアさんも随時募集されています。詳細は以下のインスタグラムでご確認ください。
https://www.instagram.com/matteroftrustjapan/
▶️エジオトロトでは、この活動に賛同し、2.5cm以上の髪をカットされるお客様の髪をマターオブトラストジャパンに寄付させて頂きます。
2023.12.30 hisa